第4回品評会金賞受賞「ピッカリングさん」インタビュー 後編

 消しゴムはんこファンの皆様、ごきげんいかがですか?

 この度、昨年12月9日に開催された「第4回国際イレイサースタンプ品評会」において最高金賞および金賞を受賞された作家の皆様にインタビューを敢行いたしました。作品の制作秘話や独自のテクニック、そして普段の作家活動等について等、普段はお聞きすることができないような内容の濃いお話をたくさんお伺いすることができましたので、詳細を余すことなく皆様にお伝えしたいと思います。

 今回は1月23日に公開しました前編に続き「ピッカリングさん」のインタビュー後編をお届けします。


前編はこちら


(前編の続き)

- ところで、「できるだけ短い時間で全作品を彫り上げる」とおっしゃったばかりですが、今回のエントリー作品はデザインから完成までどのくらいの時間を要しましたか?

ピッカリングさん:
 今回の作品は下絵は写真合成、光と影の部分分けの区分、濃淡の数値付けで4時間を要しました。そしてゴム印の洗浄、下絵コピーの転写を行って乾燥するのに一日置きます。彫り始めてからは今回の場合2時間×3日かかりました。

- ということは彫りに関しては正味6時間を要したことになりますね。ちなみに彫っている最中に休憩をはさんだりすることはありますか?

ピッカリングさん:
 2時間の途中では休憩は入れません。

- 休憩なしで一気に彫り進められるんですね。

ピッカリングさん:
 そうですね。そして一つ大事なことがあります。人物でも動物でも、彫り始めは目の部分から行うという事です。目は一番集中力を必要とする部分です。

- なるほど。目は作品の表情を決める核心となる部分ですし、ピッカリングさんが大きなこだわりを持つのもよくわかります。ところで、デザイン画の消しゴムへの転写はどのような方法で行いましたか?

ピッカリングさん:
 今回は下絵のコピー(注:インクジェットではなくレーザープリンターや事業所で使われる大型のコピー機・複写機で印刷したもの。コンビニにもおいてあります)をゴム版の上に乗せてマニキュア除光液を比較的多めにかけて、ティッシュで軽くたたくように転写します。そして完全に乾く前に(まだ濡れているうちに)コピー紙を静かにはがします。乾きすぎるとコピー紙がゴム版にくっついてしまい、また濡れすぎていると転写の図柄が汚れてしまいますので注意が必要です。

 この適度の具合をマスターするのに何回もやり直したものでした。
 消しゴムハンコで転写の正確さが作品の良し悪しを大きく左右するのは痛いほど分かっていたので一生懸命覚えました。

- 詳しくご説明いただきありがとうございます。最近ではわりとポピュラーになってきた感のある除光液転写ですが、きれいに転写するためには経験とノウハウが必要な手法なんですね。そして、やはり転写の精度が作品の完成度を大きく左右するんですね。続きまして、今回制作に使用した道具について教えていただけますか?

ピッカリングさん:
 基本的にLEDスタンド、カッターマット、デザインナイフ、彫刻刀(4種類)、シャープペンシルです。

- ありがとうございます。ところで、今回作品に使用した消しゴムの銘柄を教えていただけますか?

ピッカリングさん:
 ほるナビA6を使用しました。

- 普段の作品制作も同じ銘柄の消しゴムを使われているんですか?

ピッカリングさん:
 そうですね。ですが、今後は色々な銘柄を試してみたいと思っています。

- メーカーによっていろいろ特色がありますので、いろいろ試してみると良いかもしれないですね。それと、ピッカリングさんの消しゴムはんこの彫り方を教えていただけますか?

ピッカリングさん:
 置き彫り、奥に押す「押し彫り」です。

- ありがとうございます。それから今回の作品についてですが、印面の着色と印影に使用したインクはどのようなものを使われましたか?

ピッカリングさん:
 シャチハタ黒色インクです。こちらも消しゴム同様、色々な銘柄を試してみたいと思っています。

- ありがとうございます。続きまして、ピッカリングさんの消しゴムはんこ作家・ハンドメイド作家としての現在の活動状況を教えてください。併せまして、主に情報を発信しているSNSアカウントをお持ちでしたら教えていただけますか?

ピッカリングさん:
 もっぱら個人的に制作して、自分のFacebookやホームページに投稿しています。

◆Facebook「Kenichi Shinohara」
https://www.facebook.com/profile.php?id=100009889185316
◆ホームページ「ピッカリングの部屋」
http://pickering2012.web.fc2.com/i/

 第二回国際イレイサースタンプ品評会では山田泰幸賞を頂き、第四回である今回は金賞を頂きました。また第6回、第7回FEI PRINT AWARD(FEI ART MUSEUM YOKOHAMA)で入選いたしました。

- 素晴らしい実績をお持ちですね。では、イベント出展等も含めた今後の活動予定と、作家として目指すところや目標となることを教えていただけますか?

ピッカリングさん:
 わたしのこれからの目標は色の表現です。本来自分の得意な分野は色彩の表現ですのでこの面も十分表現できるように努力したいです。多色刷りのためには浮世絵の見当にあたるような冶具が必要です。ぜひこれらの技術をつかみ取りたいです。

- 非常にチャレンジングな目標ですね。

ピッカリングさん:
 そして、オリジナルの色彩を表現出来るようインクの選定もこだわってみたいと思います。多くの作家の皆様がブログやイベントでプレゼンテーションされている表現方法を見習って、自分自身で積極的にアピールすることも重要と考えています。

- なるほど、とても楽しみですね。では最後になりますが、目標とされている作家の方はいらっしゃいますか?

ピッカリングさん:
 うえむらゆみこ先生とは親しくさせていただき本当に感謝です。先生の創造性豊かな模様はわたし自身も創作意欲を掻き立てられます。

- うえむらゆみこさんは多彩なスタイルを巧みに使い分ける稀有な才能をお持ちですよね。ピッカリングさんの今後のご活躍がとても楽しみです。

ピッカリングさん:
 皆様と比べてまだまだ若輩者ですが、これからもよろしくお願いいたします。

- 金賞受賞、本当におめでとうございました。今後のご活躍に期待しております。本日はありがとうございました。


ピッカリングさんのより詳しい情報はこちら

公式HP:http://pickering2012.web.fc2.com/i/
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100009889185316


消しゴムはんこの彫りの美しさとデザインを競うコンテスト「国際イレイサースタンプ品評会」
ただいま6月2日開催の第5回品評会のエントリー受付中!

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(国際イレイサースタンプ品評会開催委員長 中鉢久夫 / 2019年1月25日配信)

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