第4回品評会金賞受賞「ピッカリングさん」インタビュー 前編

 消しゴムはんこファンの皆様、ごきげんいかがですか?

 この度、昨年12月9日に開催された「第4回国際イレイサースタンプ品評会」において最高金賞および金賞を受賞された作家の皆様にインタビューを敢行いたしました。作品の制作秘話や独自のテクニック、そして普段の作家活動等について等、普段はお聞きすることができないような内容の濃いお話をたくさんお伺いすることができましたので、詳細を余すことなく皆様にお伝えしたいと思います。

 今回は初の金賞受賞に輝いた「ピッカリングさん」のインタビュー前編をお届けします。


ピッカリングさん


- この度の金賞受賞、本当におめでとうございます。はじめに受賞された感想をお聞かせいただけますか?

ピッカリングさん:
 この度は大変栄誉ある賞をいただき、本当に感激です。応援して下さった皆様に心から感謝を申し上げます。

- 続きまして、ピッカリングさんが国際イレイサースタンプ品評会にエントリーしようと思ったきっかけというのは何だったのでしょうか?

ピッカリングさん:
 最初は個人的に制作し、その作品をFacebookなどに投稿してお友達の感想をいただいていました。そしてみなさんが御評価下さったので、本格的な公募展に応募してみようと思いました。
 そこでいろいろ調べまして、消しゴムはんこを愛する人々が最も目標としているのが国際イレイサースタンプ品評会だと知り、全力を尽くして取り組んでみようと思ったのです。

- なるほど。それでは、今回のエントリー作品のテーマと作品に込めた想いについてお話をお聞かせいただけますか?

ピッカリングさん:
 この作品は自宅の庭の木に集まってきたメジロの姿を注意深く写真に収め、それらの中で特に印象深い風景を選んで図案を起こしたものです。

- デザインの中の鳥はメジロだったんですね。たしかに目の周囲が白く表現されていますね。

ピッカリングさん:
 はい。私の作風として従来は音楽家などの人物の顔をモチーフにすることが多かったのですが、今回は身近な鳥をテーマに「スズメ」に続いて「メジロ」の作品を作ってみました。

- そうだったんですね。次に印影のデザインについてお伺いします。ピッカリングさんがデザイン画を描く際に注意していることや心がけているのはどのようなことでしょうか?

ピッカリングさん:
 一番大切なことは、対象への敬意、愛情、感動だと思っています。

- なるほど。

ピッカリングさん:
 この想いが集中力を生み、自分でも考えもつかなかったコンセプトが生まれ、更にはモチーフに合った表現方法のひらめきが導き出されます。

- なかなか興味深いお話ですね。これはあくまで私自身の感覚ですが、これまでの消しゴムはんこにはあまりない視点といいますか、どちらかというと絵画や彫刻などの作家に多く見られるスタイルのように感じます。これらの点も含めて今回のエントリー作品についてお伺いしたいのですが、影となる部分も含めた作品全体が線を中心に構成されています。これは木版画に見られる表現手法に近いと私的に感じたのですがいかがでしょうか?

ピッカリングさん:
 そのようにおっしゃってくださってありがとうございます。少し長くなりますが話をさせてください。

 わたしは昔油絵を描いていました。その時のわたしの画の特徴は、対象の個々の部分を平面的にとらえ、それらの一つ一つは塗りつぶした色域なのですが、それらの色の組み合わせによって、前面に来る色、奥に引っ込む色、コントラストが強調される色などを配慮して、
遠方から見て如何にインパクトを持たせるかということを目指したものでした。
 今回の消しゴムハンコの作品では対象の個々の部分を平面的にとらえることは油絵の時と変わらないのですが、単色で表現しようとするときに色の濃淡を如何に表現するかという事を考えました。線で表現した濃淡は全部で6段階有り、これらを一つ一つ下絵に割り当てて、計算しながら彫っています。

- そうでしたか。今のお話で、先ほどお話しいただいた対象への想いと捉え方をされる理由に合点がいったといいますか、すべてが一本の線でつながった・・・そのように感じています。消しゴムはんこ界ではあまりお目にかからない独自性の高い作風やスタイルは、ピッカリングさんのこれまでの経験則の上に成立しているということがとても良く理解できました。続きまして、作品の制作過程において苦労した点や苦心したことについて教えていただけますか?

ピッカリングさん:
 対象の個々の部分を平面的にとらえることと線で表現した濃淡を割り当てるという方法を見出した時は、何か一つの壁を乗り越えたようでとても嬉しかったです。とはいえ、先にも言いましたがテクニックの方向は決まっていても、その対象への情熱がなければ単なるルーティン的な仕事になり、結果として成長のないつまらない作品になってしまいます。ですからわたしの場合下絵をつくりあげるのが最も生みの苦しみを味わう工程です。

- 今回の図案のような細かい部分や細い線を彫るために、普段から心がけていることや何か工夫されていることがありますか?

ピッカリングさん:
 やはり集中力を持続させることだと思います。そのためにわたしは音楽を聴きながら作品を作ります。音楽家の肖像を彫るときはその音楽家の音楽を流しながら行います。

- 適度にリラックスしながらも集中力を維持できる環境づくりをされているんですね。

ピッカリングさん:
 そうですね。それと、彫刻刀は細線を彫りやすいものを複数準備して彫っています。
 わたしの場合、正確な揺らぎのない線を引くというよりも、全体のバランスの中で面白味の出る様な流れや勢いを大事にしています。そのため出来るだけ短い時間で全作品を彫り上げるように心掛けています。

- 作品の印象として「繊細さの中にダイナミックさを感じる」のは、今おっしゃったような「流れや勢い」というものを大事にされているからなんですね。


次回「後編」に続きます。どうぞご期待ください。


ピッカリングさんのより詳しい情報はこちら

公式HP:http://pickering2012.web.fc2.com/i/
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100009889185316


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(国際イレイサースタンプ品評会開催委員長 中鉢久夫 / 2019年1月23日配信)

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