「hottaraciiさん」金賞受賞者インタビュー 前編

 消しゴムはんこファンの皆さん、ごきげんいかがでしょうか?国際イレイサースタンプ品評会開催委員長の中鉢久夫です。

 6月17日に開催された「第3回国際イレイサースタンプ品評会」の受賞作品発表後、最高金賞ならびに金賞を受賞された作家の皆様にインタビューを行いましたのでご紹介したいと思います。
 今回エントリーされた作品の制作秘話や苦労話、そして普段の作家としての活動や今後の展望について等々、消しゴムはんこへの強い想いをひしひしと感じる、とても中身の濃いお話をたくさんお聞きすることができました。

 シリーズでお送りする「第3回品評会受賞者インタビュー」。今回は、エントリーナンバー25番「hottaraciiさん」のインタビュー前編をお届けします。


hottaraciiさん


作品に込められた自分自身へのメッセージ

― この度は金賞受賞本当におめでとうございます。はじめに受賞について一言メッセージをお願いします。

hottaraciiさん:
 この度は金賞という素晴らしい賞をいただけ大変光栄に思います。初めての品評会の参加、そして名もない作家の私に一票を投じていただけた事、心から感謝いたします。皆さまありがとうございました。

― hottaraciiさんが国際イレイサースタンプ品評会にエントリーしようと思ったきっかけというのは何だったのでしょうか?

hottaraciiさん:
 これから本腰を入れて作家としてやっていく事を今年に入って決めたのですが、自信を付けるために大きな事に挑戦したいと思っていました。その時にたまたま仲良くしていた作家さんが初参加をする事を知り、その方に「共に挑戦してみよう!」と後押ししていただいた事がきっかけです。

― なるほど、そうだったんですね。今回の金賞受賞は今後の活動に向けての大きな励みになりますね。では続いて、今回受賞された作品に込めた想い、そして作品が持つ世界観について教えていただけますか?

hottaraciiさん:
 小さい頃から絵を描くのが好きで、高校も大学も美術を学び、大学を出てからは仕事をしながら鉛筆画を描いて作家として個展などをして活動していました。
 今回の作品ではあえて鉛筆画を描いていた頃の世界観で挑戦しています。ちょっと癖がある画風なので、きっとその方が人の目を惹けるのではないかと思いまして。

― ご自身が描いていた鉛筆画の世界観、ですか。

hottaraciiさん:
 はい。そして、私が絵や図案を描く上で心がけている一番の事は、“余白の美”です。絵の中に思想的な世界を作り出す上で余白をとても大切にしています。

― それは興味深いお話ですね。

hottaraciiさん:
 ありがとうございます。
 私の場合、表現したいメインのモチーフが決まったら、コラージュして少しずつ絵をまとめていくスタイルなのですが、必要な物だけコラージュして、余計な情報は取り入れず余白を生かすようにしています。余白があった方が、見る側も製作者の意図が汲み取りやすく理解しやすいのでとても大切にしている事です。

― なるほど。詰め込み過ぎず空間を活かすことで、制作者が作品に込めた意図や世界観が作品をご覧いただく方に伝わりやすくなる…ということですね。では、今回のエントリー作品のテーマを教えていただけますか?

hottaraciiさん:
 今回は“夢”がテーマなのですが、朧げな夢を表現するために背景は水彩で淡くしました。そして、メインモチーフとして鯨を一番表現したかったので、不必要な情報を取り入れないようにサブモチーフには宇宙と鳥の群れのみを採用しました。

― 意外性のある組み合わせですね。では、それぞれのモチーフが持つ意味を教えていただけますか?

hottaraciiさん:
 鯨は古来から各国で神聖なものとして扱われ、夢占いでは「幸運」「希望」「物事の大きな転換期」「最大限の力の発揮」などの吉夢の象徴となっています。ただ、シュチュエーションにより凶夢にもなり得る存在なので、その背中合わせな意味合いに惹かれてメインモチーフにしました。

 宇宙は「未知」「無意識」「孤独」の象徴で、目の前に広がる宇宙の夢は直感にしたがって行動すれば、これまでにない新しい自分を発見できる意味があります。

 鳥の群れは、心身のストレスからの解放を暗示し、芸術的感性が鋭くなっていて良いアイデアが閃く意味合いがあります。

 その三個のモチーフを取り入れることにより、作家として生きていく事を決めた自分に対して、“希望を持って直感的に創作活動をする”と背中を押す図案にしました。

― なるほど。それぞれのモチーフに今お話していただいたような意味があり、そしてご自身に向けたメッセージをデザインの中に盛り込んでいたんですね。驚きました。

hottaraciiさん:
 ありがとうございます。ただ、これはあくまで自分に対しての意図なので、ご覧いただく方には自由に意図を受け取っていただければと思っています。このような理由もあり、今回は絵画のように作品の背景にストーリーが読み取れるような作品に仕上がるよう心がけました。

― こうしてお話をお伺いすることで、hottaraciiさんの作品が持つ深い世界観と込められた意図、そして作品から放たれる魅力の深層に触れることができたような気がします。ところで、普段制作されている消しゴムはんこの図案も、今回の品評会に出品されたような雰囲気を持つデザインのものが中心となっているのでしょうか?

hottaraciiさん:
 普段は大人も使えるようなシンプルでスタイリッシュなはんこをメインに製作しています。「消しゴムはんこ=可愛いはんこ」というイメージがあるので、シンプルでお洒落なものが好きな大人も楽しめるよう製作しています。
 重ね捺しが好きなので、ワンポイントで色を入れられるようなスタイルが多いですね。

― なるほど。

hottaraciiさん:
 それと、個人的に登山やキャンプなどのアウトドアが大好きなもので、山やキャンプなどをモチーフにした外遊びシリーズも作っています。

― アウトドアをモチーフとした作品というのは面白いですね。話は変わりますが、複雑なデザインの作品を制作する際は、どの場所から彫り始めてどのように彫り進めるのかを、印面への転写が完了した時点であらかじめ決めているのでしょうか? それとも、その時々の思い付きで彫り進めていくのでしょうか? 特に今回のエントリー作品のように、精緻なデザイン部分と比較的広めの余白部分が明確に分かれている場合の彫り進め方については、多くの消しゴムはんこ愛好家の方が興味を持つポイントだと思いますが…。

hottaraciiさん:
 小さい作品でも、今回のようなハガキサイズの作品でも、私は一番大きな余白から彫り進めていきます。理由は簡単。余白処理が苦手だからです。苦手な余白を終わらせてしまえば、後はスムーズに製作できるので。

― 余白が苦手というのは意外ですね。ということは、細かい部分を彫るのは得意なんですか?

hottaraciiさん:
 細か過ぎるのは苦手ですが、基本的に細密な部分を彫るのが好きです。これは鉛筆画でも一緒でした。ただ、どちらにしても文字はとても苦手ですが。

― そうなんですね。

hottaraciiさん:
 なので、余白から処理してお楽しみには後に残すスタイルでいつも製作しています。好きな食べ物は後に残すタイプです。笑

― なるほど!そう言われると納得ですね。


 次回、後編に続きます。どうぞお楽しみに。


「hottaraciiさん」のより詳しい情報はこちらです。
Instagram:https://instagram.com/hottaracii
minne:https://minne.com/@t00y-am-a
creema:https://www.creema.jp/creator/523737


(国際イレイサースタンプ品評会開催委員長 中鉢久夫 / 2018年8月17日配信)

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