ハンドメイド作家活動5年目の挫折、再起へ

 消しゴムはんこをはじめ、ハンドメイド作品の制作や販売、講師活動を通じて充実した毎日を送る女性が増えている。ハンドメイド作家ウォッチャーがそんな女性たちの本音に迫る、イマドキの作活(作家活動)事情をお届けするルポタージュ『ハンドメイド作活白書』。

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 Fさん(仮名)は東京近郊に住む30代の会社員女性。7年前からソーイング系のハンドメイド作品を販売し、デザインフェスタなどの大型イベントなどにも出展し、キャリアを重ねてきた。ところが活動5年目に入ってから「スランプ」に突入しているという。

 「私にとって黒字にならなきゃ意味がないという気持ちで活動をしていました。作品の販売だけで生活できるようになることが目標でした」

 Fさんは、ハンドメイド作品の販売は「副業」ではなく「本業」にするために努力を重ねてきたが、作品の売上はあるものの、販売収入だけで生活するにはほど遠い状況だったという。

 「理想に近づけなくて辛いということもありましたが、同じジャンルで後から後から次々と同業者が出てきて、追い越されていくように感じていたことも辛かったです。一時期は何も作れなかったし、道具にも触ることができない時期がしばらくありました」

 同じころ、Fさんの周囲の友人たちはみんな結婚をしたり出産したりと、独身のFさんだけがどこか取り残されたような気持ちにもなったという。「もうやめよう」と諦めかけたとき、偶然にも販売活動をはじめたばかりの頃に作品を買ってくれた友人が、いまも作品を大切に使っていることを知った。

 「すごく嬉しかったですね。もっと売れたいとか、もっと上に行きたいという焦る気持ちばかりで、買ってくれた人への感謝をいつの間にか忘れていたようにも思います」

 Fさんは現在、しばらく休止している作品販売の再開に向けて動き出している。長年使っていた「屋号」もリニューアルして、心機一転活動を再開したいという。

 「本業にすることを100%あきらめたわけではありませんが、1つ1つの作品と向き合って、購入してくださる方に感謝しながら活動したいと思っています」

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アレクサンドリーネ瀧山:ハンドメイドの世界をウォッチするライター。
※記事中のコメントは取材協力者の主観に基づくものです。また協力者の意向によりプロフィール等には一部フィクションが含まれている場合があります。

(ライター:アレクサンドリーネ瀧山/2017年10月17日配信)

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