川治伴江さんロングインタビュー【後編】

 2018年3月31日より福井県坂井市の「一筆啓上 日本一短い手紙の館」にて【川治伴江 革命-Creation brings about a revolution 消しゴムはんこ魅了の新世界】と題し、初の個展を開催中のイレイサースタンプアーティスト川治伴江さんのロングインタビューをお届けします。
 今回は【後編】、作品の核心に迫る制作の秘訣や今後の展望などをお話しいただきました。


~線の美しさが作品の美しさを決める~

― 川治さんの作品は、大胆な構図の中に繊細なラインが綿密に織り込まれているという印象を強く感じますね。

川治伴江さん:
 ありがとうございます。ですが、とにかく細かく彫ればいいというわけではない。絵画やデザインはライン…特に曲線の美しさだと思うんですよね。なので、細かい部分はもとより長い線なども途中で止めることなく一気に彫り上げることで、点同士が線としてきれいにつながって美しさが際立ってくるんですよ。

― 一気に、ですか?

川治伴江さん:
 はい。これは絵を描くことと基本的に同じだと思っています。点と点を結ぶ線をいかにきれいに彫り上げるか?それが作品の美しさを引き立たせることだと考えています。

― なるほど。

川治伴江さん:
 ですので、余計なことや無駄と思えることは一切しないですし、このことが私の作品制作におけるポリシーになっています。自分自身ではそうは思っていないのですが、小さな作品であっても無駄なく一気に彫り上げるために、作品完成までにかかる時間がとても短いと言われることが多いんですよ。これも余計なことや無駄なことをしないから可能になるんです。

― 今お話にも出てきましたが、川治さんの作品は線の美しさがとても際立っていることが大きな特長となっていますよね。

川治伴江さん:
 ありがとうございます。先ほどもお話ししたように、長い線なども途中で止めることなく一気に彫り上げることで、線そのものが持つ美しさを際立たせるように心がけています。

― まさに絵を描くような感覚ですね。

川治伴江さん:
 そうですね。そして、彫りあとを美しく見せるために刃を入れる回数は極力少なくするよう心掛けています。たとえば三角形を彫る場合は、大きさに関係なく三回しか刃を入れません。

― 何と言えばいいのか・・・まさに「真剣勝負」という感じの、とても張り詰めた雰囲気の中で制作していらっしゃるんですね。

川治伴江さん:
 いえいえ、決してそんなことはないです(笑)。張り詰めてばかりでは制作も行き詰ってしまいますからね。気持ち的にはリラックスした状態で制作に取り組むようにしていますよ。

― こういう質問は失礼かもしれないですが、例えば失敗した場合は修正などを行うことはないのでしょうか?

川治伴江さん:
 失敗しないように全神経を作品制作に集中する、これが全ての解決策ですね(笑)。


~モチベーションを上げることで作品の完成度を高める~

― 川治先生は多くのコンテストに出品されていますね。

川治伴江さん:
 はい。ただ、私が出品しているコンテストは、基本的に私のことを知っている方が誰もいないところに出すようにしているんです。そして、一回だけしか出品しないことを心がけています。

― 一回だけ?それはなぜですか?

川治伴江さん:
 ものすごく集中して作品を仕上げるためです。労力ってひとつのところにしかつぎ込めないじゃないですか?そうして仕上げた作品をたった一つのコンテストに応募する「一発勝負」という縛りを自分自身に課すことで、作品の完成度を極限まで高めていくことを心がけているんです。

― なるほど。ということは、今後もそのような創作スタイルを崩さず多くのコンテストに挑戦し続けると?

川治伴江さん:
 そうですね。とはいえ、多くの著名な作家さんから見たら私なんて無名の一制作家でしかないですので(笑)。ゆくゆくは日展やル・サロンなどにもエントリーしてみたいと考えていますが、今はまだまだだと考えています。

― 「機は熟している」とは思っていないんですか?

川治伴江さん:
 とてもとても(笑)。まだまだそんなレベルに到達したとは思っていません。ひとつだけ救いがあるとすれば、私と同じようなスタイルを展開している作家の方がいないということくらいでしょうか。

― 独自性の高い作風ですし、そう簡単に真似できるものではないと思います。

川治伴江さん:
 ありがとうございます。私の作品や制作スタイルは「簡単に真似できない」というところを目指していますので、そのようにおっしゃっていただけると本当に嬉しいです。

― いずれにせよ、近い将来に川治さんの作品がそのような場で観られるようになることを期待していいということでしょうか?

川治伴江さん:
 いつとは明言しませんが、ご期待いただければ嬉しいですね(笑)。


~決め事がない=新しい何かが生まれる可能性がとても高い~

― 漠然とした質問になりますが、川治さんにとって「消しゴムはんこ」とはどのようなものですか?

川治伴江さん:
 そうですね・・・私にとっての消しゴムはんこは「無限の楽しみ方があるもの」ですね。彫る楽しみ、捺す楽しみ、消しゴムはんこを使って何かを作る楽しみ・・・楽しむ方の数と同じくらいの楽しみ方があると思っています。

― 楽しむ方の数と同じくらいの楽しみ方、ですか?

川治伴江さん:
 はい。たとえば、消しゴムはんこの使い方って厳密なルールが存在しているわけではないので、使う方それぞれの自由な発想で楽しんでいただいていいと思うんですよね。「消しゴムはんこはこうあるべき」とか、そんな感じの縛りや決め事が存在しないのが良い点だと思っていますし、逆にそのような縛りや決め事を自分の中で作ってしまうと、せっかくの自由な楽しみ方が奪われてしまうように感じるんですよ。

― なるほど、ちょっと深い話ですね。

川治伴江さん:
 そして、決め事がないから新しい楽しみ方や制作スタイルが出てくる可能性がとても高くなると思うんです。決め事という一線を引いてしまうと、その線を突き抜けて新しいことにチャレンジしようという気持ちもなくなってしまうと感じでいるので、少なくとも自分の中ではそういった凝り固まった考え方をしないように心がけています。

― なるほど。思い思いのスタイルで楽しむことが大事なんですね。

川治伴江さん:
 そのとおりです。かんたんな図案の消しゴムはんこを制作していろんなものに捺して楽しんだり雑貨を制作したり、そして私のように大きな作品を制作したり・・・いろいろな楽しみ方があるのが消しゴムはんこの美点だと思いますし、だからこそ多くの方にこんな楽しみ方もあるんですよ!ということを知っていただきたいと思っています。

― 本当におっしゃるとおりですね。では最後に、個展の開催やTV出演で大忙しの川治さんですが、今後の予定や目標などをお聞かせいただけないでしょうか。

川治伴江さん:
 はい。当面はカルチャーセンターやカフェでのレッスンを充実させながら、新たなコンテストに応募するための作品を制作していきたいと思います。また、個展やプレミアムレッスンもより多く開催していきたいですし、ゆくゆくは日展やル・サロンへのエントリーも目標にしています。他にも私のレッスンをより多くの方に体験していただけるような企画も考えているところなんですが、これも近いうちにぜひ実現させたいなと思っています。

― それは楽しみですね。

川治伴江さん:
 企画段階なので詳しいことはまだお話しできないのですが、全てがまとまりましたらお知らせしたいと思いますので楽しみにお待ちいただければと思います。

― 今日は大変多くのお話をお聞きすることができてとても楽しかったですし、すごく勉強になりました。本当にありがとうございました。

川治伴江さん:
 こちらこそありがとうございました。


川治伴江 革命-Creation brings about a revolution
消しゴムはんこ魅了の新世界

会場:一筆啓上 日本一短い手紙の館
http://www.tegami-museum.jp/
住所:福井県坂井市丸岡町霞町3-10-1
開館時間:9:00~17:00(16:30最終入館)
主催:公益財団法人 丸岡文化財団
後援:坂井市・坂井市教育委員会・北國新聞社・福井新聞社・NHK福井放送局・FBC福井放送・福井テレビ・福井ケーブルテレビ・さかいケーブルテレビ・こしの国ケーブルテレビ・一般社団法人JESCA日本イレイサースタンプ協会・株式会社ツキネコ・ヒノデワシ株式会社・一般社団法人グローバルStamp’nマイスター協会・株式会社井ザワ画房・Cafe Duisit Heren


【川治伴江さんプロフィール】

福井県を拠点に活動するイレイサースタンプアーティスト。テキスタイルデザイナーとしての経験を元に、幾何柄・花柄などのモチーフをはじめ様々なテイストの作品を創作する中で、消しゴムはんこと他の技法を組み合わせて作品を表現する「イレイサーミクストメディア」と呼ばれるジャンルを確立し第一人者として活躍する傍ら、各種商業催事出演、県内外において出張講座、文化センターにて講師活動を行っている。2018年3月に福井県坂井市の「一筆啓上 日本一短い手紙の館」にて初の個展【川治伴江 革命-Creation brings about a revolution 消しゴムはんこ魅了の新世界】を開催。第14回福井県テキスタイルコンクール入選、第65回福井県総合美術展入選、第5回世界平和芸術家協会展優秀作品賞、第4回ホルべイン版画コンクール入選、第9回スタンプカーニバル2015コンテスト日本遊印アート協会賞受賞、第10回モナコ・日本芸術祭2016モナコ公国文化庁芸術創造賞受賞など、入選・受賞歴多数。

川治伴江さんの情報はこちら
http://ameblo.jp/lumcyan2012/
https://www.facebook.com/TomosCollection
https://www.instagram.com/tomoe_kawaji/


(消しゴムはんこライブラリー編集部 / 2018年4月 9日配信)

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