「消しゴムはんこde絵本作り」ばむへいさん連載 第88回
消しゴムはんこ作家・ばむへいさんの連載「消しゴムはんこde絵本作り」第88回をお届けします。
ばむらんどにも、秋がやってきました。
朝の空気はひんやりして、木々の葉っぱが少しずつ色を変えています。
森の中を歩いていたハリネズミのハリーは、風にほっぺをすりすり。
「びゅうびゅう、こんにちは、風さん!」
風はうれしそうに森をかけぬけて、木の葉をくるくると舞わせました。
そのとき——
コロン、と何かが足もとに転がってきました。
見ると、まるくてつやつやのどんぐりです。
「まあ、風さんの落とし物かな?」
ハリーは小さなかごを取り出して、どんぐりをそっと入れました。
すると次の瞬間、風がまたびゅうっと吹いて、
今度は、木の上からぱらぱらぱらっといろんなものが降ってきました。
黄色い木の葉、つやつやのくり、まつぼっくり。
まるで森じゅうがプレゼントをくれているみたいです。
ハリーは夢中になって拾いました。
背中のとげにも、ころころ木の実をのせながら、
「風さん、ありがとう! 秋ってすてきだね!」と笑顔でつぶやきます。
でも、そのとき。
ひとつのどんぐりが、ころころころ……と転がっていってしまいました。
「あっ、まって〜!」
ハリーは小さな足で一生けんめい追いかけます。
どんぐりは坂をくだり、丘をこえ、草むらをぬけて——
やがて風の吹きぬける丘のうえで、ぴたりと止まりました。
ハリーが追いついたその場所で、風がふわりと舞い上がりました。
葉っぱが一枚、ハリーの足もとに落ちてきます。
まるで風さんが「ここにあるよ」と教えてくれたみたい。
ハリーはどんぐりをそっと拾い上げました。
「風さん、あなたは秋の贈り物を運んでくれるんだね」
風は優しくハリーのまわりをくるりと回って、また森の向こうへ吹き抜けていきました。
その夜。
ハリーの小屋には、風の落とし物がたくさん並びました。
どんぐり、くり、松ぼっくり、まっ赤な葉っぱ。
小さなテーブルの上には、秋の香りがいっぱいです。
ハリーはあたたかいお茶をいれ、
風の音を聞きながらつぶやきました。
「風さん、今日もありがとう。ぼく、幸せいっぱいだよ」
窓の外では、木の葉がまたひとつ、くるりと舞いました。
それはまるで、風さんからの「どういたしまして」みたいに——。
タイトル「風の落とし物」
いかがだったでしょうか?あなたにもステキな風さんの贈り物が届きますように ♪
心ほっこりしていただけたなら、ばむへいは幸せです♡

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(消しゴムはんこライブラリー編集部・2025年11月26日配信)
