消しゴムはんこ作家・ばむへいさんの連載「消しゴムはんこde絵本作り」第87回をお届けします。
十月になると、ばむらんどでは風がひんやり。
木の実がぽとぽと落ちて、空が少しだけ遠くなります。
そして、この季節になると、みんなが口にする言葉があります。
「十月は気をつけなさい。
ドロボウネコがやってくるよ。」
ある日の夕方。
ばむとぺんきちとうさこは、丘の上のパン屋さんのベンチでおやつを食べていました。
「ドロボウネコってほんとにいるの?」と、うさこ。
「うそだよ〜」と、ぺんきちが笑います。
でも、ばむはちょっとだけ真面目な顔で言いました。
「ぼく、おばあちゃんから聞いたことある。
夜にくちぶえが聞こえたら、すぐ家に帰らないと、
いろんなものがなくなるんだって。」
その夜。
ぺんきちが「ほんとに出るか見に行こう!」と言い出しました。
3人はこっそりランタンを持って、いちご畑へ向かいました。
風がびゅうと吹いて、草がさわさわ。
月が雲にかくれると、あたりが少しこわくなりました。
ピュウ〜〜〜…
どこからか、くちぶえの音。
3人はぴたりと立ち止まりました。
「な、なんの音…?」
ぺんきちの羽がブルブル震えます。
草のかげで、何かが光りました。
金色の目が、じっとこちらを見ています。
「ひゃああっ! ドロボウネコだー!!」
3人は一目散に逃げだしました。
けれど途中で、うさこの持っていた
“はちみつパンケーキ”がぽとり。
影の中から伸びたしっぽが、それをそっと拾いあげました。
「これ…おいしそうだね。もらってもいい?」
ふりかえると、そこに立っていたのは真っ黒なネコ。
つやつやの毛に、金色の目。
でも、思っていたよりずっと優しい顔をしています。
「ぼく、ほんとは“盗んでる”わけじゃないんだよ。」
「えっ?」と3人。
ネコは月の光にカゴをかかげました。
中には、ぼうし・手袋・リボン・りんご・鈴……
どれも、誰かの“落としもの”。
「夜になると、みんな急いで帰るからね。
忘れものを拾って回ってるんだ。
口笛は“もうおうちに帰りなさい”っていう合図なんだよ。」
ばむたちは、ほっと胸をなでおろしました。
「じゃあ、ドロボウネコさんは悪い子じゃないんだね!」
「うん、優しいネコさんだった!」
ネコはにっこり笑って、
ピュウ〜〜〜と、もう一度くちぶえを吹きました。
月の光の中、しっぽがゆらりと消えていきます。
それからというもの、ばむらんどの十月は、
夜になるとみんな早めに帰るようになりました。
だって、忘れものをしないようにするために。
風にまじって、今日もくちぶえが聞こえます。
ピュウ〜〜〜…
「おやすみなさい、ドロボウネコさん。」
タイトル「ドロボウネコと十月のくちぶえ」
いかがだったでしょうか?まっすぐ帰らないといけませんね♪
心ほっこりしていただけたなら、ばむへいは幸せです♡
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(消しゴムはんこライブラリー編集部・2025年10月26日配信)

